2013年8月3日土曜日

8.5:大洲城の魅力に迫る


愛媛の大洲城があまりにもよかったので、別に記事にしました。

城の魅力というと、やはり現存の建築物かどうかであると思います。
しかし大洲城に現存天守はありません。大洲城は復元天守です。ただし、復元方法が素晴らしく、当時の工法と材料を再現し建築されています。
「と言っても偽物なんでしょ?」などと感じるかもしれませんが、さにあらず。

現存天守にはない、復元天守ならではの魅力があり、これは現存天守に比肩しうる価値ある文化財だと確信しました。


外観はこのようになっています。
多くのコンクリート製の復元天守も外観は忠実に復元されているので、外観に特徴はありません。
むしろ現存天守の少しくたびれた感じがない分、コンクリート製の復元天守に近い雰囲気を持っています。

内部はこのようになっています。


まず大きく異なるのが、材木の色です。現存天守の黒い材木は経年によるものなので、新しい材木を使う復元天守はこういう配色になります。
これは大変貴重な光景で、城郭の往時の色彩を楽しむことができます。
また各工法も忠実に再現されています。


和釘です。鍛冶職人が伝統工法に則り一本一本鍛え上げた逸品です。
現存天守は黒い材木に隠れてほとんど意識することのない釘も、アイデンティティの一つとしてその存在を主張します。

組み木ももちろん当時の設計通りです。


これらは宮大工と地元の大工の共同作業によるもので、先人たちの魂と、現代の職人による技術と情熱がひしひしと伝わってきます。
複雑な組み木が忠実に再現されています。


柱が割れています。当時の通り、広葉樹を使用した柱はどうしてもこのように割れてしまいます。
しかしこれは当時と比べると非常に割れの少ないほうで、ここに現代の技術が生きています。当時にはない理論と技術に則った乾燥方法で作られた材木です。

現代では「背割り」と言って、あらかじめ見えない面を割っておくことで、見える面に割れを生じさせない加工をしますが、あえて行っていないとのことです。

また、表面粗度もきめ細かくツルツルです。もちろんカンナ掛けであり、機械加工ではありません。当時の加工精度とどれほど違うか興味あります。

心柱など実に見事です。当時の人達にも見せてあげたいなぁ。


また、伝統技術では耐久性が保証できない部分は現代の工法を活かしています。


このように、現代の匠たちの技術と情熱が過去の建築物に宿る瞬間に、強く強く心を打たれます。
現存天守にはない感動です。これはいい加減に作られたものではなく、多くの職人たちの魂が込められています。
その証左が、大洲城にはありました。


見えるでしょうか、鏡越しにネズミがいます。


名前もわからぬ現代の匠が置いていったものだそうです。
このあたりには「ネズミのいる船は沈まない」という伝承があり、城を船に見立てゲン担ぎにおいていったと推測されています。

大工のこのような粋な計らいは古くからしばしばみられ、有名なのは東大寺の「忘れ物の墨壺」です。
大工として命に等しい大工道具を、人目のつかないところに置く。これは明らかに意図的で、なぜなら墨壺は柱を組む段階で利用する道具ではないからです。
東大寺の墨壺は解体修理の時に初めて見つかったそうですが、ネズミ然り墨壺然り、大工が自らの仕事に対し如何に情熱と誇りをもって取り組んでいるのかが伝わってきます。


そんな建築物を「現存ではない」などという理由で見向きもしないというのは実に勿体のないことではないでしょうか。

ほかにも丹念に塗り重ねられた漆喰や、瓦など、ここ大洲城は多くの魅力を持っています。
是非皆さんも一度足を延ばしてみてください。復元天守ならではの感動があなたを待っています。

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